矛盾だらけの説明、深まる学閥の関与!
「県異動方針通りの異動だ」を繰り返す県側の尋問
口頭審理は最初に県側の代理人が、証人である元県教委参事(当時のAさんの担当管理)に人事異動の目的や異動方針について確認することから始まり、Aさんの本件異動にかかわる経過が適正な手続きをもって行われたことを立証する形で進められました。異動会議において、校長が同席する中で、市町村教育委員会教育長から直接意見を聞いたこと、その後、在籍していた市教委から免職が、異動先のA市からは採用の内申があったことを確認し、異動手続きが適正に行われたことなどを型どおりに確認していきました。「異動経過説明」と「内示」の食い違いについては、「ことばの教室(担当)でとは言っていない。ことばの教室のある学校でと言ったはずだ」と主張し、あたかもAさんが「ことばの教室で」と聞き違いをしたかのように口裏合わせをしてきました。さらに、「内地留学後の異動のルールは存在しない」(内地留学したからと言って通級指導教室の担当になるとは限らない)ことを確認し、本件異動が定期の人事異動と何ら変わらないものだったとの主張を展開しました。そして、「通級指導教室」の指導者か「通常学級」の担任かは、異動先の校長の裁量であると責任逃れの証言までとび出しました。
最後には「本来人事異動は自由な裁量に委ねられている」ものであり、「本人の希望がそのまま通る異動はない」という高圧的な姿勢を見せ、さらに「本件異動前と異動後で職務内容も給与面でも何ら変わりがない」ことをもって、「健康上の理由のため健康破壊につながること」「現場で言語通級指導教室の担当者として貢献しようとしていた実践の展望が損なわれたこと」は「不利益な処分」には該当しないという結論を主張しました。
組合との確認事項は無効?
組合では「内地留学生の異動については在籍校長のみならず前任校の校長とも十分連絡を取り、本人の希望を十分把握して行う」「内地留学生は計画的に人材配置ができるよう県の方で責任を持って行う」「異動原則は、推薦された教育委員会または近隣の学校である」ことを05年11月4日の交渉で確認しています。また、06年2月10日には「第1回人事異動会議で各校長に人事異動の経過を本人に対し伝えるように県は指示している」「もし経過説明がない場合は県に連絡を入れれば県から校長を指導する」ことを確認しています。こちらの代理人が、これらを証人に確認すると、「それは交渉ではなく『申し入れを聞く会』であり、話を聞いただけである」「これは確認には当たらない」「個々の異動については管理運営事項であり、交渉は行わない」などと言い始めました。この誠意のない発言には驚きました。しかし、当時の管理企画係のTさんは「信じてもらっても構いません」と述べているのです。交渉であろうが申し入れであろうが、両者が話し合って確認したことをゼロにしようとする姿勢は許せません。700万円もかけて研修した内地留学生の異動はいったい誰が責任をもつのか?
~推薦した市町村任せ、校長任せでいいのか?~
さて、本件の問題の核心に迫る質問です。「内地留学後は推薦された市町村にもどるという原則があるというが、戻らなかった内地留学生もいますね」と言うと、それを認める証人。「ではAさんも戻らなくてもよかったはず。在籍している市町村でも空きがあったのに、なぜA市にもどされたのですか?」と質問すると、「推薦したところに戻るのが原則だから」と繰り返します。そして、「『ことばの教室』がある学校に異動させた」と、あたかも配慮して言語通級指導教室のある学校に異動させてやったと言わんばかりです。そして、前述したとおり「通常学級の担任にするか通級指導教室の担当にするかは校長が決めた」と。そのことについてAさん本人が「私が異動先の学校で言語通級指導教室を担当する確率は?」と聞くと、「低かった」と答えます。Aさんが通級指導教室の担当ではなく通常学級の担任になることを知っていながら、A市に戻したのです。それを異動先の校長に責任を押し付けるのは、「内地留学生は計画的に人材配置ができるよう県の方で責任を持って行う」に反しています。市町村に戻らない内地留学生もいたのに、なぜAさんは戻ることに縛られ、在籍していた市町村の空きポストに異動できなかったのでしょう。そもそも言語通級指導教室の担当というのは、専門性の高い希少ポストです。県が税金を使って内地留学生として研修をさせたからには、研修後は計画的にそのポストに配置していくべきです。それができなかった本件異動には、やはり問題があるのです。裏で恣意的な動きがあったとしか思えません。
Aさんの健康状態が伝わらなかった
不十分な具申が明らかに!
Aさん本人が質問しました。「私の足の障害について、在籍校の校長からどのように聞いていましたか?」すると、証人は「聞いていません」。これはどういうことでしょう。Aさんは「足が悪く通常の担任をする自信がないので、何としても通級指導教室の担当にしてくれとお願いした」と言っています。健康上の問題こそ配慮してもらわなくてはならないことです。そこを伝えなかった在籍校の校長の大きなミスです。さらに「内地留学生の異動については在籍校長のみならず前任校の校長とも十分連絡を取り、本人の希望を十分把握して行う」と言っていたはずの県の怠慢さが明らかになりました。「適材適所ではなかったかもしれません」と答えた証人!
当局の尋問の中で、人事異動の目的について「適正な数で適材適所の人員配置をすることにより、各公立小・中・養護学校の教育課程の円滑な実施を可能とするために、定期の人事異動を行う必要がある」という説明がありました。そこで、Aさん本人が「私のような足の悪い教員が通常学級を担任することは、適材適所と言えますか?」と問いました。証人は「可能だと思っていた」と言いました。「可能か不可能かではなく、適材適所かと聞いているのだ」と言うと、とうとう「適材適所ではなかったかもしれません」と述べました。私たちは、Aさん個人の問題としてではなく、教育を受ける子どもの権利という点でも、本件異動には問題があると思っています。「足の悪い教員が担任することについて、担任された子どもに不利益があると思いませんか」という質問には「ないと思います。得るものはあると考えます」と答えた証人。子どもたちに不利益があっては申し訳ないと思いながら必死に担任としての仕事をこなしてきたAさんの苦労や職場での配慮がどれほどのものであったか想像できないのでしょうか。それを「可能だ」「子どもに不利益はない」などと簡単に言わないでもらいたいのです。証人もそう言わざるを得なかったように、やはりこの人事は「適材適所ではなかった」のです。教員の希望や子どもや親のニーズを尊重した人事を行うことが子どもの教育権を保障することにつながるのです。そのことを軽視した県教委の姿勢が明らかになりました。
傍聴に来てくださった皆さん、
ご支援ありがとうございました。