校長の責任をあいまいにし、県の架空の「異動方針」を適用させる誤認!
3月17日(金)、新潟地方裁判所で、県立盲学校寄宿舎指導員の主任昇任差別訴訟の判決があり、斎藤巌裁判官は原告の訴えを棄却しました。
判決は、「元校長から昇任・異動が実現するという発言があったとは考え難い」、「県教委にも異動希望が伝えられている」、「県は異動を昇任の条件としている」と、K元校長や県の言い分を一方的に認める、極めて当局よりの不当な内容です。
また、平成28年度の人事では、県が唐突に出してきた、説明も運用もされていない「架空の異動方針」をそのまま鵜呑みにする判決で、お粗末としか言いようがありません。
昇任制度の認識不足、内規による裏人事、県教委答弁の矛盾に蓋をする判決内容
新潟県だけが主任昇任に際し異動を課していることをはじめ、異動時に校長のヒアリングが一切行われず、本人の希望が県に上げられていなかった事実、異動内規により県と校長会(学閥)の二重人事が行われていたことなど、およそ他の教員人事ではありえないことが明らかになったのに、原告の主張を一切認めない内容は、個人の人権が軽んじられている判決と言っても過言ではありません。
新たな「異動方針」で、昇任異動実現!
依然、主任昇任時の異動を義務付ける
しかし、この裁判を通して当局は新しく「人事異動方針」を策定しました。これにより、これまでフリーハンドで行われた人事異動に一定のルールが課せられました。この方針の下、昇任異動を実現することができました。
裁判では負けましたが、方針を策定させ、主任昇任を勝ち取ることができたのは大きな成果です。これまでの皆さんのご支援に感謝いたします。ありがとうございました。
しかし、県は「昇任異動は管外異動もあり得る」としており、引き続き運動を強めたいと考えます。
【裁判の判決内容と分析・反論】
1 平成27年 K校長と県の対応について
上段が判決内容。下段が分析と反論。
K元校長は、寄宿舎指導員は主任異動希望があることを再三県へ伝えている。
実際には、異動調書も「異動希望なし」で上げられており、情報公開で県に上げた文書などは全くないことが分かっている。校長の言い分を一方的に取り上げた内容。
校長はヒアリングを行い、県教委に適切に伝える責任があるが、個々の異動内容を特定したうえでこれが実現されるよう、県教委に対して積極的な働きかけをするまでの義務を負っているとは認められない。
校長は「異動希望をヒアリングし、県に上げる責任がある」と言いながら、「県へ積極的な働きかけをするまでの義務を負っていない」とし、人事における校長の責任が不透明で、恣意的な人事につながる可能性を残す内容。
主任異動の配置は、総合的に判断して行われるものであるから、主任昇任条件を得ても、直ちに主任指導員に昇任されなくても職権乱用ではない。
異動を昇任の条件とする場合、異動者に一定の負担が生じるが、寄宿舎の実情や組織の活性化のためには合理性がある。
異動を昇任の条件とする場合、異動者に一定の負担が生じるが、寄宿舎の実情や組織の活性化のためには合理性がある。
主任昇任は管理職登用ではなく、待遇改善であることに対する裁判官の認識不足。実際、今年度から新しい異動方針により、一般異動で組織の活性化は解消される。
(新教組とは)必要があれば居なり主任も考慮するという限度で、居なり昇任を認めることを検討していくなどと回答した証拠はない。
新教組との妥結事項ではないとする内容で認められない。
2 平成28年上越特別支援学校への内示と昇任取り消し
平成28年度人事異動方針に準じた内容になっている。
特別支援学校教諭の異動方針をそのまま、寄宿舎指導員に当てはめた「架空の異動方針」を鵜呑みにした不当な内容。
教職員の社会生活上の負担を考慮すれば、自宅からの通勤が容易な範囲での配慮が望ましいが、人材育成や組織の活性化を図るという主任異動の目的からすれば広域異動の必要性を否定することはできない。
教員人事でもありえない「広域人事異動」を、夜勤もある指導員に当てはめるという信じがたい内容。
裁判の結審にあたって
皆さまの温かいご支援、本当に有難うございました。
皆さまのご支援がなければ、ここまで辿り着くことはできませんでした。
裁判は残念な結果に終わりましたが、主任昇任を勝ち取ったこと、また、寄宿舎指導員の人事異動方針を明文化させたこと、得た物の方が大きく、勝ちに等しい結果になったと思っております。
今後も私共、寄宿舎指導員の地位向上のために頑張っていきたいと思っておりますので、どうぞ変わらぬご支援、宜しくお願い致します。皆さま、本当に有難うございました。
裁判の判決内容について
3月17日の判決は、県教委や校長の主張のみを採用し、寄宿舎指導員の訴えをまったく冷たく斥けるという、極めて不当なものでした。
働く者は、使用者の横暴な扱いによってその権利を侵害され不利益を被ったときに、最後の方法として裁判所に訴えます。裁判所というものは、そうしたやむにやまれぬ働く者の心情や主張を十分に汲み取り、使用者の横暴を断罪し、傷つけられた名誉や被った不利益を回復させることが責務ではないかと思います。今回の判決は、そうした裁判所の責務を放棄したものであり、本当に腹立たしい限りです。
寄宿舎指導員の職務内容、その職務を遂行し生活するに足る勤務条件や待遇のあり方及びその実態について、また学校職場には本来あってはならない教委や校長による上意下達の学校運営の実態、蔓延する過労死寸前の勤務実態とそれを放置し続けている教委や校長の無責任さ、さらに本県独特の「学閥」による教育行政・学校運営支配の実態ついて、裁判長はどれほどの見識をもっておられたのかまったく疑わざるを得ません。
そもそも、主任昇任異動の目的は何なのでしょう。
県の「管学校理運営規則」によれば、寄宿舎指導員については「委員会が別に定めるところにより、寄宿舎主任指導員を置くことができる」(第5章・第49条8項)と規定されているのみで、その職務内容は規定されていません。主任指導員の職務は指導員と同様であり、ましてや「中間管理職」でもありません。にもかかわらず何故一律に異動を強要するのでしょうか。おかしいではありませんか。
被告・県教委の主張に本音が出ています。
寄宿舎が少なく5市に集中していることから、一つの寄宿舎に長期間勤務する者が多くなる。そうすると組織が活性化しづらくなる。だから、少なくとも主任昇任の際に異動をさせ、人材育成・組織の活性化を図る。
まさに、県教委の都合で昇任時に一律に異動させようというのです。主任指導員の職務を遂行する必要性からの異動ではないのです。こんな県教委の得手勝手な主張を判決は採用しているのです。
残念ながら裁判には負けてしまいましたが、この裁判を通して、県教委に寄宿舎指導員・実習助手対象の新たな人事異動方針・異動基準を策定させることができました。そして、この新たな人事異動方針・基準の下で原告の主任昇任を実現することができました。大変大きな成果だったと思います。
この間、「寄宿舎指導員の居なり昇格を実現する会」に結集していただいた皆様、また裁判闘争を支えていただいた多くの皆様に、心から感謝申し上げます。
浦 登 (「居なり昇格を実現する会」代表)
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